下咽頭の悪性腫瘍
下咽頭の悪性腫瘍では、がん腫が多く、広がりはすみやかで頸部の食道や喉頭にも及び、頸部食道がんと呼ばれることがあります。咽頭のつかえる感じがあるときには、早期に診断してもらうことが大切です。「声がかれる」「のどがつかえて食べづらい」などの症状とともに「首にしこりがある」ときには、十分な検査が必要です。下咽頭の腫瘍は少しずつ増大の傾向があります。腫瘍が食道や喉頭に広がっている場合は、大胸筋皮弁とか空腸を利用して、下咽頭や食道の再建手術を行わなければならなくなります。したがって、できるだけ早期に診断をして、早期に系統的治療をするべきです。その場合、放射線治療、および頸部リンパ節を徹底的に郭清(清掃)する手術が行われます。
食道の良性腫瘍
食道がんや肉腫以外の良性腫瘍も、食道に発生することがあります。平滑筋腫が多くて、乳頭腫や血管腫はまれです。大部分の症例で症状を訴えませんが、大きくなると、つかえ感、狭窄感、疼痛を訴えます。無症状の小さなものは、無処置で様子を見るだけでよいのですが、大きくて症状のあるものは摘出します。
食道がん
食道は、口と胃をつなぐ約25cmの細長い管のような臓器で、頸部食道、胸部食道、腹部食道に分けられます。食道の内面をおおっている粘膜は扁平上皮で、皮膚をおおっている組織とほとんど同じ形をしています。食道に発生するがんは、通常は扁平上皮がんで、円柱上皮などから発生する腺がんは比較的少ないのです。日本では食道がんの約95%が扁平上皮がんで、残りの約5%が腺がん、そのほかのがんです。日本胸部外科学会による統計では、胸部食道がんが84%と大部分を占め、腹部食道がんが6%、頸部食道がんが5%です。また2つ以上ある多発がんも3.5%にみられました。